失恋花火





光の尾を引いて夜空に大輪の花が咲く。

  ドン

遅れて音が響いた。


マンションの屋上から見る花火は滑稽だ。
確かに綺麗だが消えた後に音が鳴るので実に間抜けである。
まぁ、綺麗なことには綺麗なので見ている訳だが。
どういう訳か他に人がいない。
まさか屋上の入口に貼られた“立入禁止”を守っているのか。
いや、単に花火を屋上で見たく無いだけだろう。
花火が打ち上げられる川原は電車で二十分程度だ。
最近風が冷たいしどうせ外なら近くまで見に行くだろう。

この時期の打ち上げ花火は珍しいから混むだろうにご苦労な事だ。
最も俺も見に行こうとしていたのだが。


バババババ

小さめの花火が連続で上がったらしい。
低い位置なのでここからでは見えない。
辛うじて空が照らされて赤色なのが見えるだけだ。
と、一瞬空が暗くなる。
そして花火の位置が高くなりまた見えるようになった。
それに続いて機関銃のような打ち上げ音がより大きくなる。

フィナーレが近いのか。
時計を見れば九時前。
もう終わる時間だ。
俺は段々高い位置になる花火を尻目に屋上を出る。

出た理由は簡単。
この後の花火を見たくなかった為だ。

階段からでも花火の音が聞こえる。
「……ッ」

  ガッ

その音を掻き消す様に壁を殴った。
「うるさい……」
壁にもたれかかりそのままずるずると座りため息をつく。

去年は一緒に見たんだ。
今年も一緒に見るつもりだったんだ。
その約束もしたんだ。

なのに。

「なにが“幸せになれる”、だ……」
額に手を当て足を踏み鳴らす。

《恋人と二人で見れば幸せになれる花火》
この花火大会のフィナーレで上がる一つがそう呼ばれている。

「所詮はジンクス……いや、そうか……」

確かに幸せだったこの一年間。
でも有効期限が一年間だった。
そういうことか?

「……どっちにしろ変わんねーか」

外で一段と大きな音が鳴り辺りは静かになった。



俺は静まるその場所でこの花火を見た全ての恋人達を呪った。










2007/10/14