続く世界に響く声
「アレの声を聞いた事があるか」
貴方の叫び声の方へ向かう。
叫び終わる頃に着くよう、ゆっくりと。
今は丁度地球で日が暮れる時間だ。
この時間帯の地球の空は恐ろしいと聞く。
まるでアレのようだ、と。
ドアに着いた。
だがまだ叫び終わっていない。
仕方がないのでそのまま暫く待つ。
窓から赤い薔薇が見えた。
下半分が崩れている。
後半年も持たないだろう。
叫び声が止んだ。
ゆっくりとドアを開ける。
気が狂いそうな真っ白な空間。
その中の貴方。
貴方は呼び掛けても口から息を漏らすだけで答えない。
目を合わせようとしても焦点がずれているから合わない。
シン様の言う通りに貴方が壊れるとは思いませんでした。
直接でも間接でも同じとは行かない様ですね。
でも貴方が生きているだけで嬉しいのです。
それが成功だから。
壊れた精神は少しずつ治していけばいい。
それを邪魔する者はもういない。
一番邪魔なコレはこれから外すつもりだ。
軍はあの〈コトバ〉が完璧に滅ぼした。
〈ホノカ〉は例の攻撃で砕けていた。
〈暁〉は信号を放ち役目を終えた。
〈おろか〉はシンの軍が壊した。
シンはさっき貴方が殺害した。
ああ。
心配しないで下さい。
丁度貴方を治した時にシン……シン様は起きる。
これはあらかじめ想定済みの事態なのです。
いえ。
想定済み、は可笑しいですね。
シン様が仕組んだ“劇”ですから。
シン様は貴方の事をよく知っておりました。
貴方の破壊衝動の事もです。
そしてその原因がコレにあった事も知っています。
「これからボクは劇を始める」
貴方の事を知ってそれからシン様は“劇”を始めました。
お礼とかは言わなくていいですよ。
貴方のため、という建前でシン様自身のためになるからです。
貴方にとっての障害物がシン様にも障害物なだけです。
ちなみにアレは壊れていません。
ですから怒ったりしないで下さい。
ですから考えたりしないで下さい。
ですから希望をもっていて下さい。
それらは今の貴方にとって重要な事です。
聞こえてますか。
聞こえてませんね。
まあ壊れた直後ですからね。
ですがこれでもう貴方は終わりです。
もう何もするべき事はありません。
ちゃんとコレも外しましたから。
休んでください。
……おやすみなさい。
貴方の体を持ち上げ部屋にあったベットに横たえさせる。
さて外をさっさと片付けに行こう。
まだまだやるべき事はたくさんある。
終わりなんてすぐそこだけどなかなか終わらないようだ。
「だからボクはあの声を求めている」
始まりは貰うよ。
終わりは貴方に。
つづきは託して。
残酷な世界にあの美しい声を響かせよう。
2006/08/06