昏の世界に響く声
腐敗した俺と汚濁していくオレ。
どちらが悪いかなんて比べるまでもないだろ?
時々俺は、何でもいいから壊したくなる。
そして俺はその為の機械を作れた。
だから例えば〈辞〉を作った。
あれは数千もの村や町を撃破した。
一体の戦闘機としてその数は前代未聞と言われる程だ。
そんなのを野放しておけないし役に立つからだろう。
俺は軍に迎え入れそこで開発を続けた。
でもいつも罪悪感に潰されそうになっていた。
俺は強い人間ではないのだ。
自分の責任も自分で負えない逃げるばかりの卑怯者。
そしてある日から罪悪感を紛らわせる為の物を作り始めた。
まず〈オロカ〉。
結局それは戦闘機として完成させてしまったが。
軍からの金を使った為、戦闘機を期待されたからだ。
そうなると気付かなかった訳ではない。
俺は〈オロカ〉は軍用には向いていないと思っていた。
取り敢えず作って、返されたら作り直す気だった。
しかし〈オロカ〉は何故か彼等のお気に召してしまった。
それで〈オロカ〉は戦闘機として完成したのである。
その後〈オロカ〉を簡略化した戦闘機が大量生産された。
当然それらは戦闘に用いられた。
〈オロカ〉制作は本来の目的から大きくそれてしまった。
そのせいで。
次に俺は〈暁〉という名の首飾りを作った。
今度は自分の金を使ったから何の問題もない。
首飾り型だから周囲からも怪しまれない。
「おや遂に色気づいたか機械ヲタク」
「何の事だ」
「お相手は誰だい」
「は?」
「まさか体内にコードが張り巡ってないだろうね」
という具合に、奴――榛ですら勘違いをした。
まあつまり今度は周囲からの影響はないと言える。
我ながら首飾り型というのは良い案だったと思う。
勿論、俺が作ったのだからただの首飾りである訳がない。
〈暁〉にはもとの考案での〈オロカ〉と同じ性能をつけた。
だからこいつは考える事が出来るし話す事も出来る。
そもそも〈暁〉という名もこいつ自身が決めた名だ。
それに辞書をいくつか丸々入れたから知識も俺より豊富だ。
〈暁〉は制作する際に一度失敗して挫折しかけた。
だが〈仄〉に助けられ、何とか成功に漕ぎ着けたのだ。
俺が何を作ろうとしていたかというと話し相手だった。
「榛だったか、貴様の仲間の名は」
「〈仄〉を作った奴なら」
「ハシバミというのはハイタカという鳥の異称でもある」
「漢字が違うんだよな?確か」
「ハイタカにはその鳥を指す意味ともう一つ……」
「もう一つ、何だよ」
「ふふっ今日はここまでで貴様とオレとのお喋りは終わりだ」
「なにぃ!」
こいつはくだらない事ばかり俺に教えたがる。
こいつのくだらない話こそ俺の望んだ物だ。
気を紛らすのに丁度いい。
理由も無く破壊したくなる事も減った。
少しずつ思考が温厚な方向に向かう。
そのまま良い方向へと向かって行きそうだった。
「!?……そ、んなつもりじゃ……」
楽しく笑う事が出来る様になりそうだった。
「……そんなそん……あああ……」
その為に〈暁〉を作ったのに。
「いやだああああああああああああああああああああああっ」
黒っぽい液体が広がる床。
俺の手もその色に染まっているなんて、嘘だろう?
2006/07/23