光の妖精





ねえ、君に僕が初めて会った日を覚えてる?
君は忘れたままかな?
でも僕は思い出したんだ。

あの日は急な大雨で。
君の傘は骨が四本折れて使い物にならなくなり。
僕はというと傘なんて持っていなかった。
だから僕も君も偶然あの店に駆け込んだんだ。
あの店の事は覚えているかい?
あの青いヘアバンドしたおじさんの店だよ。
で、その彼が話しかけてきたんだよね。
「雨が止むまでうちの店を見てかないかい?」
でも君は彼を怖がっていたね。
思わず後退して服を更に濡らしちゃってたし。
そんな君を見て彼は笑いながら付け足したんだ。
「今日誰も来なかったから淋しいんだよ」
それを聞いて僕も笑っちゃったよ。
それで彼が中に入って僕もそれに続いて。
だけど僕に君が続くとは思わなかったよ。
君は本当に怖がっていたみたいだったから。
店内に入ると真後ろに君がいて本当に驚いたよ。
「君はやっぱり見に来てくれた。気をつけてね」
彼は君にそう言ってから両手を広げた。
「さあ見て行きたまえ。私の集めた変な物達を」
店内は薄暗くて初めは何も見えなかったよね。
やがて目が慣れると確かに変な物ばかりだった。
君もとても驚いたっていう顔をしていたよ。
色んな物があったよね。
子ヤギと狼が手を繋ぐ人形のついたオルゴール。
丁度、五本の針が真下を向いていた球形の時計。
巨人にしか持てないような巨大な銀色に光る鍵。
そして君が一番気になってたあれ。
あれは思い出せるんじゃないかな?無理かな?
コルクで詮した硝子の小瓶に入った光の妖精。
君はそれから目が離せなかったんだよね。
その時僕は君を見ていたんだ。
なんでこんな物をずっと見てるんだろうってね。
泣き叫んでる光の妖精がどうかしたのかなって。
「それが気になるのかい?」
彼が君に言った。
「それには触るなよ。結局光っていうのも……」
彼が言い終わる前に、君が小瓶に触ろうとした。
僕は君がそうするのを止められるはずだったよ。
でも君は僕をすりぬけてその小瓶に触ったんだ。
君の手が小瓶に触った瞬間、中の妖精が笑った。
同時に君がぐにゃりと曲がる。
「善とは限らない。気をつけろと言ったのに」
彼がさっきの続きを言ったのが最後に見えたよ。
「幽…付き……ら…丈夫…と思…た…だ…どな」

気がついたの三週間後だった。
その日の存在に気付いたっていう意味だよ。
その日以来僕は君の事を知っていた。
その日の事覚えていなかったのにね。
とにかく僕は一週間前に思い出したんだ。
今何故この話を君にしたかというとね。
あの光の妖精。
あれは、笑った時に何かを言った気がするんだ。
それが僕には、
“残り一ヶ月の命”
だった気がしてきたんだよ。どういう意味かな?
……ねえ。
なんで今日は動きすらしないの?
きっと今日は話してくれると思ってたのに。
いつもの白じゃなく赤色のシャツを着てるから。

ねえ。
そんな濁った目をしてどこ見てるのさ?
僕を見てよ。









2006/06/04