唯一の白の青い牢
そこは暗い水の中。
一人の少年が青い建物の青い牢に住んでいた。
少年はその牢で生まれ育った。
彼の世界は牢と看守と天井の窓だけだった。
天井の窓はとても小さかった。
だがちょうどその上を魚が通る事もある。
その度少年はそれに見惚れた。
ある日のことだ。
少年が目を覚ました時、牢の外、看守の隣に。
そこに見慣れぬ男が二人いた。
少年は自分と同じ形の物が他にもある事を知った。
男達が少年を見ながら何か話し始める。
「どうする?まだ能力は発現していない様だが」
「拒否反応はまるで無い様だな」
「だが、頭が悪そうだ。使えるか?こんな奴」
「まあその辺は白色赤輝炭の能力によるな」
「とりあえず白雪サンの所まで持って行こう」
片方が牢の鍵を開ける。
ガチャリ
その音を聞いた少年は全身を強張らせる。
「怖がっている……だけではなさそうだな」
徐々に少年の周りだけが暗くなっていく。
「能力の発現、か……?」
扉の外で男達は何が起きても良いように構えた。
少年の周りの闇は深くなり続ける。
やがて少年がその闇にすっぽりと包まれる。
するとそれは少年ごと、ふっと消えてしまった。
「な……!?どこに消えた!」
慌てて二人は牢の中に入る。
その二人の背後に今度は光が現れた。
二人はそれに気付くと振り向いてしまった。
その為に強烈な光に目をやられ動けなくなる。
光は広がりやがて男達を飲み込んだ。
そしてそれも男達ごと、ふっと消えた。
だが今度はそれが消えたと同時に少年が現れる。
少年はただぼーっと開かれた扉を眺める。
暫くしてふらふらと牢の外に出た。
ビチャッ……
牢の外は一段低く、水が溜まっていた。
ぴちゃぴちゃと暫くその場で足踏みをする。
それからゆったりと看守の方に向かった。
看守はもう動かなかった。
ペチペチとその小さい手で看守を叩く。
それでも動かないとわかると興味を失くした。
看守から離れ、牢と反対の方向に歩きだす。
途中、魚が足元にいるのを見つけ拾い上げる。
しかしビチビチと跳ねる姿を見て放り捨てた。
また先へ進み出す。
突き当たりで右に曲がると人が二人いた。
「遅い」
と黒い帽子を深く被った長身の男の方が言った。
「能力を破壊しますか」
と銀色の髪で顔が殆ど隠れている方が言った。
少年は訳が分からず首を傾げる。
「お前は何でも破壊、破壊と言うがな、」
「何でもすぐに破壊しろと命じられるからです」
銀髪が男を遮り男は苦笑した。
「こいつは貴重な白色赤輝炭だからだーめーだ」
それから男は少年に近付く。
「おい、そこの少年。言葉は分かるか?」
「うん」
「看守ロボは正常に動いていたらしいな。
俺は白雪冬馬、またの名をサヴァリン。
こっちは、あー?そう、試作3-201-23。
俺達はここからお前を連れ出しに来た。
能力を存分使ってみたいと思うだろう?
外に出てみようぜ」
「うん」
少年は一瞬も間を置かず返事をした。
2006/05/21