桜散る散る真っ赤な鎖
足元を見ると、
「うわー……これは酷いだろ」
沢山の桜の花が、がくごと落ちていた。
上を見上げれば予想通り雀が桜の花の蜜を啄んでいる。
「犯人はお前だ、……て、一人でこんなこと言ってると危ない人みたいだな、僕」
事実かもしれないけど。
「あー撃ち落としたいな……」
物騒な事を呟きながら、僕は屈んで足元の小石を拾う。
当たるかな。
「当たる訳無いよな……それっ」
小石は真っ直ぐに雀の方に飛んで行き。
「おおー?」
直撃。
雀は枝から落ち、慌てて大空へ羽ばたいた。
なんとも痛々しい飛び方だった。
犯人僕。
「……動物愛護団体の人とかに見られてないよな?」
動物保護団体だっけ。
まあ動物好きの集まりだって事には変わりない。
彼らの存在は動物嫌いな僕にとって理解しがたい。
「何でって言われると困るけど……ッ」
強い風が吹いた。
桜が今度こそ花びらを一枚ずつ散らしてゆく。
気がつけば僕の黒い服は桜色の斑模様になっていた。
黒い服は葬式に出た為。
……あの人の死を電話で聞いた時は嘘だと思った。
「黒い服着てくるんだよ、とか最後に付け加えてたし」
あまり常識を知らない僕でもそれ位は知っている。
全て黒にしなくていいって知らなかったけど。
「折角黒のシャツと靴下買いに行ったのにな……」
それにしても。
本当に、あの人が死ぬなんて思ってもみなかった。
いや、葬式が終わった今でも実感がわかない。
況してや。
「飛び降り自殺だって言うしな……」
自殺。
最初で最後の殺人。
またもそんな勇気のある人だとは思わなかった。
またもそんな逃げの手段に走る奴だとは思わなかった。
できる事なら知らせて欲しかった。
僕くらいには。
僕だから言えなかったんだろうけど。
僕くらいには、言って欲しかった。
「そろそろ鎖を切ろうって言ったのあっちだろ……」
再び強い風が吹き、桜の花びらが舞い散る。
僕が好きな花は桜だ。
あの人は秋桜。
なのにいつも秋まで待てず春を選ぶ。
「コスモスよりカオスの方が似合う人だったけど」
スペルが違う。
まあ何にしたって。
僕らは鎖から逃れられないのだ、何度目でも。
いつでもあの人は秋が好きだし僕は春が好きだ。
それと同じように。
繰り返してきた。
もう何度目だろうか。
「何度目だろうと同じだけれどね」
あるビルから少年(14)が飛び降りた。
二日前にもそのビルからは男性(20)が飛び降りていて少年はその彼と知り合いだったらしい。
少年の友人で男性の方とも面識のあるK君によると彼らは知り合ってたった一ヶ月だというのにまるで生まれる前から友人かのように親しくしていたという。
少年の方は後追い自殺の可能性が高い。
またそのビルでは過去にも何度か自殺があったため今年の秋には取壊される事になったようだ。
2006/05/07