消失寂寥歌〜第4番
ただただ、草原が広がるだけの空間を見つけた。
山の様に、人里離れた所にあるなら自然だ。
公園の様に、人工的ならまだいい。
けれど灰色の世界に広がるその草は不気味と言う他に何と言えよう。
あいつは人が消えているのに気付いた時どうしたのだろうか。
何かしていたのだろうか。
ふと自分が歌を歌っていることに気が付いた。
あいつが作った歌だった。
そう、これは確かにあいつの歌だ……。
これをあいつ以外の人間が作れる訳がない。
あいつは俺の妄想なんかな訳がない。
歌。これが唯一確かな証拠。
俺はあいつを捜し始めた。
親に心配させると面倒なので夜中に。
あの歌を歌いながら。
この歌まで忘れたりしない様に。
あいつにも届く様に。
だが、あいつは何処にも、何処にも、何処にもいなかった。
それに人が消えても誰も気付かない。
捜し始めてから、一年。
俺は俺が狂っていないという自信が持てなくなった。
――病院の中。幾つかの検査をした後、医者が俺に言った。
「人が消えた以外で君にとってのストレスは?」
「……寝不足ですかね」
夜はあいつを捜しているから暫くまともに寝れていない。
「じゃあ催眠剤の処方箋、渡してあげよう」
そんな訳で薬を十日分、手に入れた。
催眠療法にしては多い。
じっとその薬を見ながら消えた人達の行方を考える。
何処に行くのだろう。いわゆる別世界だろうか?
そこには消えた人達全員がいるのだろうか。
なら、このまま待っていてもまたあいつに会えるんだろうか。
「何もしなくても……」
俺の呟きは妙に大きく聞こえた。
一人暮しで一戸建てはやっぱり寂しい。
……一人暮し?
何故か違和感があった。
でも俺だけ。
寂しい、淋しい、サミシイ、さびしい。
「……寝よう」
寝て、頭をすっきりさせよう。
折角、睡眠薬を貰った訳だし。
起きた時にはあいつがいる世界かもしれない……。
どうせそんな事は無いだろうが……。
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目が覚めた。
時計を見ると四日がたっていた。
外を見ると空は暗い墨のような黒だった。
そして地面には当然の様に黄緑に光る草が生い茂っている。
他には何もない。俺は消える気配すらないのに。
呪いの言葉。
『消えてしまえ』
その通りになった。
やっぱりなと何処かで思いつつも俺はやっと泣いた。
ようやくあいつは俺のせいで戻って来ないと理解して。
気がつけば、またあの歌を歌っていた。
もう……届かないのに。
雪が降り始めた。ハラハラと舞い降りては消えていく。
……もう終わりなんて。
〈消失寂寥歌、歌い終わり〉
歌は終わり。
終わりは続き。
続きは始め。
始まり始める。
2006/04/23