消失寂寥歌〜第3番
あいつが消えた日。
あの日は特に冷え込んで。
雪が降っているというのにあいつは遊びに行こうと言った。
でもあいつが俺の家まで来て誘うなんて珍しい。
だから寒いのを我慢して行く事にした。
「ついてきて」
人のいない道やシャッターの閉まった店が並ぶ商店街を歩いた。
二人ともその間中無言だった。
なのにあいつは楽しそうで俺はそれを眺めていた。
「店、ほとんど閉まってますね。こんな所で良かったのですか」
「うん」
あいつは首を勢いよく縦に振った。
「なんでそんなに楽しそうなんです?」
「んふふ」
「……不気味な笑い方しないで下さいよ」
昼を過ぎて、青い空が見えるようになった。
誰かが作った雪だるまが崩れた。
俺はあいつが作ってきたクッキーをあいつと食べながら歩く。
隠し味か何なのか知らないが少し、しおの味がした。
「明日も暇?」
蜜柑色の空、まだ残っていた黒い雲。
誰にも踏まれず無事に積もった白い雪。
それらを背景にしてあいつが言った。
「え……暇ですが」
「じゃあ明日の朝、私の家まで迎えに来て」
俺は朝起きるの面倒だなと一瞬考えるが結局。
「……わかりました。ちゃんと起きてて下さいね?」
「どうしようかな?それじゃあ」
「またあした」
「……バイバイ」
俺とあいつはそのまま別れた。
……それが、あいつとの最後の思い出。
ああ、何で、あんなにも早く別れてしまったんだ。
最後だとは知らずに、またあした、などと言って。
でもそういえば、あいつは知っていたのかもしれない。
だから、雪なのに俺の家まで来たのかもしれない。
昔、白い雪は寂しいから嫌いだと言っていたのに。
……それすら、今となっては確かではないのだが。
後悔してあいつが戻ってくる訳でもないが悔しい。
戻る事だって出来れば良いのに。
〈第3番歌い終わり〉
2006/04/09