神官
ああ、私はなんと幸福なのだろう。
今日も神の為に働けるのだ。
ああ、神よ。
私は貴方の崇拝者でありしもべである神官です。
私はそれを嬉しく思います。
私をお選び下さりありがとうございます。
あの幼き日。
前神官の死に立ち会い鍵を貰った日。
あの時は神に仕えるなんて嫌だと思っていた。
しかし神は私を選び鍵を受けとらせた。
あの時は何故受け取ったかわからなかったが今はわかる。
あれは神の御力だ。
ああ我が神よ、ありがとうございます。
この鍵は『祭』の際に使う物らしい。
もうすぐその『祭』が行われる。
そしてそれにより神がこの世に現れるのだ。
なんて素晴らしい儀式なのだろう。
その為に必要な千の贄を集めなくてはいけない。
千人で一人一つずつ用意するのだ。
もちろん私も用意する。
だから私は今依代様の側を離れ贄を探しているのだ。
ああ、あの女なんかは良さそうじゃないか。
“力”を持つが力は弱そうだ。
私は神器を鞄から取り出した。
覆っている布を取るとまばゆい光を放つ剣が姿を現す。
後はそれであの女を一斬り……。
いや、忘れる所だった。
合言葉を言い同じ神に仕える者でない事を確かめねば。
「玉を作るは千の贄、鏡に与えるは光の剣、鍵に流すは?」
女は訝ってこちらを見るが何も言わない。
ならば良し。
我が神の贄となることを喜んで逝け。
「我が神に贄を捧げます」
神に仕える者の一人である男がそう言って贄を壇に置いた。
「ああ、これでようやく千の贄が集まった」
これで神を呼ぶ事が出来る。
神、あと少しであなたに会える。
「依代様、贄が集まりました」
「じゃあ まつりを はじめよう」
依代様は少年の顔で艶やかに笑った。
「今より『祭』を始める!」
そう言って私は祭壇に登った。
そして鍵に結ばれた和紙に書かれた文を読み上げる。
これを読み終われば贄が玉に替わる筈だ。
すると祭壇の中央に神が現れる……。
ああ、感情が昂まってきた。
もうすぐ神がこの世に現れる……!
「……をして玉にし神に捧げん!」
読み終わった。
千の贄が輝いて消え替わりに玉が現れる。
いよいよ神が現れる……。
「……!?」
突然背中に衝撃が走った。
立っていられなくなり倒れる。
「ぎょくを つくるは せんの にえ」
その声と共に玉が光り出した。
声のした方を見ると依代様が立っていた。
私の血を吸った剣を持って。
「かがみに あたえるは ひかりの つるぎ」
依代様は鏡の方へ剣を投げた。
剣は真っ直ぐに飛んで鏡に吸い込まれる。
そして鏡も光り出す。
「かぎに ながすは さいしゅの ち」
これは、合言葉……?
私の手の中の鍵も光り出していた。
「かみに ささげるは これらの ちから」
祭壇の中央が光り出した。
(…………)
あそこに、神が現れるのだ。
(体が重くてなんだか寒い)
神が現れるまでこの身体は持つだろうか。
(こんなのは聞いてない、騙された)
神の為に死ぬならば本望だ。
(神が何をしてくれたというんだ)
ああ、神が無事に現れますように……。
(嫌だ死にたく、ない……)
「お休み、そして私の一部となれ」
神の声……。
我が神のおっしゃるままに…………。
2007/04/08