「そうだな……期限は明日までだ、手は抜くなよ」
僕は思わず耳を疑った。
「え?明日?そんなの、無理だ」
「つべこべ言うな、これは頼み事ではなく命令だ」
彼女はメドゥーサのような眼光で僕を睨んだ。
やらねば殺られる。
大変な事になった。
提出期限
さて、これは一体どういうことなのか。
何故にどうしてラブレターに提出期限など設けるのか。
そう。
僕は明日までにラブレターを書かなければならない。
しかも手を抜いたら、地獄行きだ。
訳がわからないから順を追って説明しよう。
まず、僕は彼女、麻倉早紀乃に恋愛感情を抱いていた。
いつからかはわからないがいつの間にか惹かれていた。
ただ、それを自覚したのはずばり、今日だ。
今日突然友人が言い出した。
「お前、麻倉さんに惚れてんの?」
背後を麻倉早紀乃本人が丁度通ってるとは露知らず。
自分の名前が聞こえて彼女が振り返った。
僕と彼女の視線が交わる。
次の瞬間!
友人の肩に手を乗せ身を乗り出した彼女は言った。
「どうなんだ?お前、私に惚れているのか」
とてもストレートな人なのだ、彼女は。
それ故にブラック女王と呼ばれていたりする。
ブラックコーヒー……。
「えーっと……」
「ちなみに私はお前の事が好きだぞ」
え?
今なんておっしゃりました?
「さあ、さっさと答えろ」
惚れているのか否か。
僕は彼女に対する感情を考え、そして答える。
……。
こんな風に半ば強制的に自覚させられた感情ではあった。
僕は彼女に惚れている……。
だが、それは別に嘘じゃない。
とはいうものの。
これじゃ締まらないからとかいってラブレター書けって。
そう思ったなら自分が書こうよ。
と、思わなくもなかった。
それはさておきラブレターを書かなくちゃいけない。
……どうしよう。
「どうしよう」
「心の声と同じ事言うなよ」
「え?……ねぇラブレターってどんな風に書くの」
「え?うーんそうだなあ」
罪悪感からか割と真剣に考えてくれている。
「まー、テキトーに相手の長所とか書くんじゃん?」
訳ではなかった。
取り敢えず友人が当てにならなかったので辞書に頼る。
すると『愛の告白の手紙のこと』とあった。
愛の告白……。
気恥ずかしいけどそういう物らしい。
僕は彼女に惚れている。
ストレートな彼女へ送るに相応しい愛の言葉は。
買ったばかりの綺麗な便箋にペンを走らせる。
次の日、それを彼女に渡した。
中に書いたのはたった一言。
『貴女を愛しています』
彼女はそれを見て顔を赤らめた。
「それじゃ足りないかい?」
「……十分だ、莫迦」
余談。
「お前の事だから精々『好きです』止まりだと思ってた」
「僕だってやるときにはやるんだよ」
「ああ、返事がまだだったな、私も愛してるぞ」
「……普通に言うなよ(言われる方が恥ずかしい)」
2006/12/03