アナケノルイと破滅について





君は『アナケノルイ』を知っているだろうか。
それは破滅をもたらし、破滅を防ぐモノ。
数巻の書物から成る、記録と記憶を司るモノ。

アナケノルイは、僕たちを結ぶ大きな記録。
僕たちが思う世界の始まりには既にあった書物。
それは世界の中で歴史を貪り、際限なく増えていく。

僕たちは、アナケノルイの記録をマキナに一任している。
マキナが記録した事項に、他の人が記憶を書き加える。
アナケノルイはこの特殊な方法によって成り立っているので、
普段は穴を開けて紐を通す方式で作られる。
各項目ごとに目次が作られ、頁番号とそれが加えられた日が書き記されている。
例を挙げるのはやめておく。
何故ならきっと君はその日付を理解できないだろうから。
ともかくこのようにして、使いやすい方法でまとめられていくのだ。

アナケノルイは世界の始まりからあった、と伝えただろう。
ひとつの世界が終わる度に、アナケノルイは正式に書物としてまとめられる。
それを誰がやっているのかは、僕たちは知らない。
それが「誰」なのか「何」なのかさえ、僕たちには分からないことだ。
僕たちが分かるのは、最初の一冊以外は、「まとめられてきた」歴史だということ。

では、最初の一冊はどのように成り立っているのか――
おそらく君は疑問を抱くだろう。
この文章はまさに、最初の一冊を端的に説明するために作られたものだ。

もうあれは書物の形態を取ってあるから内容を加えることは出来ないし、
この文章は何処にも加えられることがない。
しかし――
考察の文章を残すことは、識者としてのつとめだから。
そして、この記憶を誰かが読んでくれるだろうことは既に予測された未来なのだから。



最初の一冊。
それは、全てのアナケノルイの原点となるモノ。
軽金属らしきものに文字が彫られ、束になって作られている。
僕たちはその双方について解析できなかった。

――では、どうして第一巻の文章が読めるのか?
それは当然の疑問だろう。
この世界に生きたことのない人間には分からないかもしれないことだ。
もし、其処にアナケノルイがあるのなら――、ああ、それなら分かるか。
僕たちにはアナケノルイがない世界などと言うものは分からないけれども、
これを読む君はそういう世界の住人なのだから、ちゃんと説明しよう。

アナケノルイには「意志」がこめられている。
第一巻だけは、どんな人であろうと認識として分かるのだ。
触れた瞬間に脳内に圧倒的な量の情報が流れ込んでくる。
求める者には幾らでも、アナケノルイは答えてくれるのだ。

第一巻には、アナケノルイに記述されている内容が全て、認められている。
そう――ずっと後世に在る、今のことまでも。

僕たちは未来を知ることは出来ない。
しかし、アナケノルイは知っている。
具体的な質問をもってすれば、アナケノルイは幾らでも答えてくれる。

この質問が一番上手いのはマキナだろう。
記録が記憶になっていないかを、鮮やかに確認する。
万一なっていた場合にはアナケノルイに基づいて修正していく。
マキナは時折未来のことも見るようだが、僕たちには何も言わない。
ただ自分たちの胸にしまっておくだけだ――それこそ、機械的に。

そんな人ばかりならいいのに、と僕は思う。

一般の人でも、未来を見ることが出来る者もいる。
そういう存在のことをエクス、と呼ぶ。僕もその一人だ。
先程までの記述も、アナケノルイに基づいていることが多い。
例えば、君がこれを読むことについて。
それを確信として抱いていなければ、僕はこれを書かなかっただろう。
この行動がどういうものなのかは、充分理解しているつもりだから。

通常、エクスは見た未来を政府に届ける。
そして政府は「未来」に基づき行動する。

・・・エクスなど、橋渡しをする役目でしかない。
それなのに、何処で特権意識を持ってしまったのだか。
何故政府とマキナを結び付けよう、などという真似をするのか。
一歩間違えれば僕らがつなげるのは政府とアナケノルイ。
そしてそれは、世界の崩壊を意味するというのに。



アナケノルイは、この世の真理。
アナケノルイは、いくつもの世界を破滅させながら彷徨ってきた。
束の間の繁栄を手土産に。
人間はその餌に釣られて、アナケノルイを――ひいては破滅を崇拝する。

一抹の疑問を抱くこともなく。

僕は疑問を提示しよう。
果たして、アナケノルイは本当に、記録なのであろうか。
僕にはアナケノルイのために作られた壮大な記憶にしか見えない。
――言いたいことは伝わっているだろうか?
僕たちの世界は、アナケノルイが作った歴史で破滅する運命なのだ、と。
きっと僕たちの歴史はいずれ闇に葬られ、アナケノルイのための物語になるのであろう。

これが僕たちの世界には読まれないことは分かっている。
アナケノルイがこんなものを読ませるわけがないから。
君の世界にはアナケノルイが行かないのかもしれない。
だから、読まれるのだと信じている。
――しかし、気をつけなさい。
アナケノルイは君に、疑惑をもたらすために読ませているのかもしれないから――



ああ、あのマキナが慌てているよ。
ではもうすぐ、この世界も終わるのかな――



願わくば、君がこの記憶を信じてくれることを。










あとがき。
思考回路がサンホラです。打ってても結局サンホラです。
ぶらっくろりこんだぁ・・・とっても。
僕たちのクロニクルは闇に葬り去られていずれロマンに・・・(苦笑)
多分書物にした時点で僕の負けだ。
いずれ空にも上げよう、内容少し変えて。

2007/06/19 2限。











2007/06/24