城主

「あら、どなたかいらっしゃったようね――
 アタナ様、少しお役目をお休みになられたらいかが?」
――私は招かれざる客を、お迎えに行くから。

「ようこそ、私たちのお城へ――
 少なくとも私は、招かれざる君を歓迎しません」

そんな、声に迎えられた。



声の主は一人の少女。
粗末だが威厳を失わない服を着て、僕のことを見据えている。
僕の存在を忌避しているようだ。
まあ、それは当然のこと。
僕はここ――異端の神を信ずる城を壊しに来たのだから。



「しかし私には、君の話を聴く義務があります。
 ――私のことはアリア、とでもお呼びください。
 さあ、どうぞ城の中へお入りくださいませ――」

どうせ偽名だろうそれを、呼ぶ価値など僕には分からない。
だから僕は、名前を呼ばない。
それを見越していたのだろうか、少女は唇を歪ませる。

僕はある一室に通された。
この城の奥の奥、迷い込んだら出てこれないだろうところ。
僕は彼女があえてこの部屋に通しただろうことを察する。

でも、これは僕にとっての好機。
――彼女は、気づいているのだろうか。

アタナは正統。アリアは異端。――だからわざわざ、アリアを名乗るのに。

この部屋に来るまで、多くの人とすれ違った。
例外なく異端の神を信じている人々だ。
彼女に頭を下げる人々を、僕は非常に憎たらしく思う。
それに気づいているのかいないのか、彼女はただ微笑うばかり。
そして彼らと一緒に祈るのだ。

「アタナ様の示す路に、救いのあらんことを――」

それすらも虚構だとは、私たちしか知らない事実。

「用件は理解しているつもりですが、そちらから切り出していただきましょうか」
豪奢な椅子に座った彼女の不思議な発言。
僕を嘲っているように感ぜられる。
「簡単な話だ。今すぐこの異端を廃し、城から立ち退いてもらいたいだけ」
「もし否、と答えましたら――?」
笑みを浮かべながら彼女は尋ねる。
答えなど、とうに分かっているだろうに。
それで尚尋ねてくる彼女が、僕にはどうしても分からない。
「この城を燃やし尽くすだけ」

「それは、困りましたわね――」――おいでなさい。
彼女がそう呟くと、僕は多くの人々に囲まれていた。
彼らは手に手に武器を持っている。
――ああ、僕を殺す気か。

「いいえ、私はただ君を闇に葬り去るだけ――殺すだなんて、もったいない」

「そんなことをしようと、新たな僕が来るだけだろう?」
僕は彼女に言う。
「たとえ君の配役が城に訪れても、私は葬るだけですわ」
彼女は僕に言う。

くすくすくす。
耳につくような哂いが残る。

「久方ぶりの楽しいときをありがとう――などと」

「では、お願いいたしますわ――
 アタナ様に愛されぬ異教徒に、裁きの鉄槌を――」

「私が言うとでも思ってらして?」

彼女が去っていくのを、最期まで見届けることもなく。










あとがき。
わーい短い。僕基準で短い。・・・いや表を鑑みるに?
いつぞやかの裏がメインのは除くよさすがに。
そりゃな、シリーズ物やりたいのに設定つめてないからな・・・
そして番外編に位置づけたいんだもんなこれ。
宗教で世界征服の番外編、みたいな。
――世界規模にはしないよ精々一国規模だよ。
おかげさまで所々の注釈が分かりにくすぎる。
今回の裏仕様を読むと本気で判らないと思う。
表はまだ繋がってるけど、な。

2007/03/18 2:22











2007/04/08