それでも、友達だから?
「満ちゃーん、みーちゃーん、どこー?」
そういいつつ俺の前を通り過ぎていく。
黒猫の耳と尻尾が奴に合わせてひょこひょこ揺れる。
奴は幼馴染の沙耶。
・・・こちらが見ていて溜め息をつきたくなるほど、どこか抜けている奴。
「さー、・・・目の前通り過ぎてくなっ!」
やっと、こちらを振り返る。
「あれー、みーちゃん、透明になれるようになったのー?それとも瞬間移動?
そうだよね、みーちゃん今魔女さんだもんねー・・・」
「んなわけあるかっ!」
まあ確かに魔女の格好はしてるけど。
奴はすたすたと歩いてきて俺の目の前に立つ。
・・・悔しいが、奴のほうが背が高い。
自然と視線は見上げる形になる。
「みーちゃん、怒っちゃ駄目だよー?」
頭を撫でつつ奴はいう。
俺はそこまで幼くはない・・・
また怒りそうになったので、深呼吸してから返した。
「ん。分かった」
「よかったあ♪」
満面の笑みを浮かべている奴の顔を見ると、怒る気力も失せる。
・・・が。
「俺から離れるなとあれだけ言っただろう。
だからこそ迷子になるんだぞ?」
まあ、離れなくても同じような気がするが・・・
一応注意をしておかないと気がすまない。
一応諭しておかないとまたやりそうだ。
「・・・ごめんなさい」
ぺこん、と頭を下げた拍子に倒れそうになっている。
「阿呆かお前は・・・」
そう呟きながら引っ張り上げてやる。
ずり落ちた耳もしっかり直す。
・・・身長差的に辛いことぐらい、理解して欲しいものだが。
「みーちゃん、ありがと」
「さー・・・そういうのは転ばなくなってから言え」
「無理」
てん、てん、てん。
ちょっとした空白が流れる。
「言い切るなっ!」
「ほらまた怒鳴って・・・駄目だよ?みーちゃん」
頼むからそう体を屈めて子供扱いするな。
「みーちゃんのほうが身長低いんだから、しょうがないよ♪」
「・・・お願いだから心を読むな。
それに、心底楽しそうにその台詞吐くな」
疲れきった俺の言葉に、けらけらと笑う奴の声がかぶさる。
「そういうのは身長伸ばしてから言おうね?」
「・・・やってやる・・・追い越してやる・・・」
俺はぐっと拳を握り締める。
「みーちゃん、ふぁいと、おー」
「おー・・・ってっ!」
結局、乗せられている自分が嫌だ。
非常に嫌だ。
・・・一応、今の状況を説明しておくべきなのか。
今日はハロウィン。
仮装してお菓子を貰いに街を練り歩いている。
まだ、一軒目にもたどり着いて・・・あ、たどり着いた。
チャイムを鳴らそうとして、ないことに気づく。
・・・今どきどんな家だよ。
「ぴんぽーん。・・・」
「だからって言うなっ!」
返答を待つのに、しっかり猫耳まで傾ける奴。
奴といると、俺はとても疲れる。
「はーい」
ああ、住人が出てきた。
「とりっく、あんど、とりーとっ」
奴は楽しそうにペンのキャップを外している。
「・・・違うだろそれ」
溜め息をついて、とりあえず好きなようにさせておく。
ああなったら何も聞かないだろうし・・・
第一、俺の目的も、食糧集めだし。
奴が貰ったお菓子を貰えばいいだろう。
そして、あらかた回り終わって。
かろうじて奴もそこにいる。
「みーちゃん、それは何日分かのご飯になるの?」
「そうだけど?」
「・・・相変わらずだね、みーちゃんも」
俺は首を傾げる。
・・・ハロウィンのあとは親がいないのだから、しょうがないではないか。
最後の一軒。
・・・と言っても、俺の家なのだが。
「みーちゃん、今年も、・・・なの?」
「・・・確実に、な」
頭が痛くなってきたことはあえて無視して扉を開ける。
「あら、小さい魔女さん、おかえ・・・」
母と・・・そこら中に散乱している、ケーキの失敗作が見えた。
毎年毎年ケーキ失敗して家中に散らかして・・・
なおかつそれを全部俺に押し付けて自分は実家に帰りやがって・・・
「・・・」
俺は無言で扉を閉める。
手に持っている箒を全力で投げつけるのを忘れずに。
相変わらず夜道を歩きながら、俺は奴と会話をする。
「やっぱり、いけないんじゃないかな?」
「・・・あれは個人的にものすごくほっときたい」
そう言うと、奴は遠い目をしながら頭を撫でる。
・・・だから、お願いだからやめてくれないか・・・
奴の腕をすり抜けて、俺は走り出す。
それを追いかけてくるのを後ろに感じつつ、
今年も過ぎていくこの日を思った。
「みーちゃん、声に出てるよー?」
「・・・俺の馬鹿っ!さーの馬鹿っ!」
結局、何も変わりはしないけど。
あとがき。
・・・書いたぜ、一応ギャグ。こんなんでいいのか?
みつる、な。みーちゃん。
ちなみに構成要素は普段の会話が大半です。
最初の方は「ひぐらしのなく頃に」の影響が出てますが。
ずいぶんと時間がかかるし、展開考えるの大変だし。
・・・疲れました。おやすみなさい。
2006/09/09 某人の誕生日。
2006/10/22