ソノアカニノマレテシマエバイイ





こつ、こつ、こつ。
御主人様とは違う足音がやってきて、扉の前で止まりました。
侵入者でしょうか、考えて仲間達と共に警戒態勢をとります。

私の愛しい仲間達を紹介しましょう。
今は丁度12人いる私の仲間。
これ以上増えることはありませんが、その理由は伏せておきましょう。
現状が変わることがない限り、減ることもありません。
外見年齢は私が思うに、10代から20代ぐらいでしょうか。
この屋敷にはほとんど人が来ないので、判断する根拠も何もないのですが。
そして、私の言うことをよく聞く、大切な子供達。

ああ、私のことを話していませんでしたね。
私はNoirと申します。
この屋敷に生まれ、この屋敷で学んできました。
仲間達の中では最古参で、一番物覚えがいいので名目上長をやっております。
そして、ただ一人横文字の名前を貰いました。
他の仲間達は、1月から12月までを司る名前を持っています。
それだけ特別に思われていた、と自惚れてしまってもいいのでしょうか。

呼び鈴の音が聞こえました。お客様です。
私達はほっとして、お出迎えの支度を整えました。
右手側に年長の6人、左手側に年少の6人が並ぶという普段の体制になってから、
私は長い洋装を引きずらないように気をつけつつ、扉を開けました。



開けた先には、一人の男性。
・・・それは、私達の知っている人でした。

「こんにちは、麗しい人形さん。――彼の部屋へ、案内してくれるかな?」
彼は、御主人様に深手を負わせた方。
しかし、彼は手に拳銃――厳密には違いますが、そのようなもの――を持っています。
あれを使われたら、私達はひとたまりもありません。

私は彼に逆らうことは出来ません。
しかし、従うこともありません。
仲間達の命令系統を確認し、私は頷きました。

「連れて行ってくれるのだね?」

もう一度頷くと、私は歩き出しました。
御主人様の期待に沿えるようにと。



彼は楽しそうに、嬉しそうに、言葉を紡いでいます。
時折話を振られますが、私は悉くそれを無視しました。
当然でしょう。
彼は彼で納得したらしく、その後は一人でなにやら呟いていました。
確かに私達から話が漏れることは在り得ませんが・・・それにしても、酷い話です。
そんなにも御主人様を侮辱したいのでしょうか。

いつのまにか彼の手からは拳銃が消え、ナイフが握られていました。
・・・私達がなんだか、忘れてしまったのでしょうか。
それとも、彼は浮かれているのでしょうか。
ナイフ如き、幾らでも対処のしようはあるというのに。



私はあるひとつの部屋の前で、足を止めました。
そして扉を開けると、どうぞお入りください、というように手を差し伸べる。
彼はすぐには部屋に入らず、私を見て言いました。

「黒の人形、貴女が先に入るのだよ」

罠ではないか、そう思っているのでしょう。
私はひとつ頷くと、先に入って彼を振り向きました。
彼は安心はしていないようですが、ひとまず部屋に入りました。
この、全てが赤黒くて、むせるような甘い香が広がるこの部屋に。

「何だ、この赤い部屋は。・・・黒の人形、答えなさい」

彼に向かって首を傾げて、私は反対側の扉から出ました。
驚いたようにナイフを構えた彼。
そのまま左腕に切り付けられました。
鈍い音と共に、ナイフは弾かれて。
切られた服の間から、無機質な球が浮かび上がりました。

彼が一瞬硬直した時に外に出て、私は錠をおろしました。
扉を叩く音がします。
しかし――あけるわけ、ないでしょう?



では、参りましょう――
仲間達が頷くのを見て、私は踵を返しました。

彼に与えましょう、長い長い死を。
願わくば赤黒い部屋が、その意味を成さないように――

しかし、無理でしょうね。
きっと彼はもうすぐ、赤黒さがまだらであることに気づくから。

でも――

そう簡単に、死なせはしない。










久しぶりにお題以外で書きました。
最初は「彼」視点にしようと思ってたけど、描写が被るなあと思って。
とても久々に気が済むまでダークにかきました。
・・・さて、タイトルどうしようか・・・

最後に少し。お人形さんは比喩ではありません。
ついでに喋らないのも機能がないからです。
あと「深手」じゃなくて死んでたりとかするけどきっとそれは自衛機能だね。

2007/05/22 4限。











2007/09/23