不確定に祈って。
世界という気紛れに、感謝という祈りを――
一日の終わりに、僕は祈る。
気紛れなんてものに祈るのは、おかしいのかもしれない。
それこそ、誰かが振った賽に祈るかのように。
だけれど僕は知っている。
神様が振った賽の目がひたすら六を出し続けたからこそ、
僕という存在がいるということを。
「わぁ・・・おはな、きれい!」
僕がまだ小さくて、舞う花弁の名前が分からなかった、あの時。
「どうして、あのお花は咲いているのだろうね?」
彼は僕に、そんな質問を投げかけた。
「あのね、ぼくね、しってるよ。
きせつ?っていうのがまわってきて、あったかくなったからだよ!」
得意げにいう僕。
ぽんぽん、と頭を撫でられて。
「そうだね。――お兄さんが、もうひとつ教えてあげよう」
一緒に砂場に行こう、と手を繋がれた。
大きなまると、一本の棒。
「これが、地球」
「ちきゅー?」
「うん。今立っている、ここ」
「ぼくたち、おちちゃわないの?」
真っ先にそんな質問をした僕に、彼は笑いかける。
「うん。地球はね、皆が落ちないように引っ張ってくれているんだよ」
「そっかー。ちきゅーって、すごいんだね」
地面を撫でる僕を、彼は嬉しそうに眺めていた。
「おにいちゃん、このぼう、なに?」
斜めに走っている線を指した。
「地球はね、この棒を中心に、くるくる回っているんだよ」
「ななめにまわるの?」
僕は首を傾げた。
「うん、そうだよ――
こうやって斜めになっているから、おひさまがあたる時間が変わってね――」
そして、季節が出来る。
彼は大空を仰いで呟いた。
僕も彼の隣に腰掛ける。
「だから、感謝しないといけない。
宇宙があって、地球があって、季節があって、そして人間がいるという――
サイコロで六を出し続けるかのような、奇蹟を」
この気紛れな世界に祈るんだ。
そうすれば、もっともっといい世界になるから――と。
「うんっ!ぼくも、おいのりするよ」
元気よく答えた僕の頭を撫でて、
「そろそろ時間だ――ばいばい」
と、彼は去っていった。
僕はそれから毎日、祈ることにしている。
この気紛れに、そして奇蹟というものに。
そうすれば――
次の日からどこかに消えてしまった彼、
あの「お兄ちゃん」に――
出会うという奇蹟も、起こるかもしれないから。
テレビに映った文字なんて認めない。
だからこその、自己防衛。
失う闇をどこまでも深く閉じ込めて。
出てこないことを祈りながら、彼を想う。
僕が僕である、そのときまでは――
あとがき。
わざわざ最後に落とすのはどうしてだろうね、僕の気性か。
幻想に振り回された気がするけれど。
しかし「お兄ちゃん」はいい人だと思う。
自分で思うからいなくなっちゃうのかそうか。
2007/01/27
2007/09/09