赤と青 2.0
僕らが毎日遊ぶようになって、しばらく過ぎた。
・・・やはり、それに気づかれないはずもない。
ただ、表向きだけは優しく僕に話しかける人たち。
僕はそんな人たちの声に―無意識の監視に―、耐えられなかった。
そしてまた、僕は彼の家、教会へと向かう。
「―随分と陰口をたたかれているな。俺のもとにまで伝わってきた」
開口一番、ルーベにそう言われる。
僕が返す言葉もなく立ち尽くしていると、幾分か柔らかい声を掛けられた。
「なぁ、サーフィ・・・お前は、『伝説』を知っているか?」
「『伝説』って・・・あの、セイとヒコの?」
「そうだ」
返答を聞きながら、幼いころに言われ続けた『伝説』を反芻する。
この村にまだ、人の住んでいない時の話だ。
綺麗な空色の女神様がこの地にやってきた。
そしてあまりにも美しい自然に感動し、人を住まわせてあげたいと感じた。
そこに、血の色をした悪魔がやってきて呪いをかけた。
この村がほとんど発展しないように、と。
この村に住む人の子孫が生まれにくくなるように、と。
三つ目の呪いをかけようとした時に、女神様が立ちはだかった。
戦ってどうにか女神様は勝った。
しかし、そのときに垂れた悪魔の血から少しのヒコが生まれた。
それを嘆き悲しみ、自分の血を使ってセイを誕生させたのだ。
―確か、そんな話であった。
「確か、こんなのだったよね?ルーベ」
「・・・セイ側に随分と傾いているけれどな」
そう言って、ルーベは苦笑する。
「おいで、サーフィ。俺らのもとに残った話を見せてやる」
早足で教会へ入っていくルーベを、僕は追いかけていった。
「・・・全く、外には無数の監視があるのだが」そして、溜め息をつく。
「う・・・わぁ・・・」
見渡す限りの、本棚と本。
「俺らの図書館だ。もちろん、セイの図書館に入っている本もある。
・・・そうじゃないと、公平じゃなくなるからな・・・っと」
その声とともに、僕の手の上には二冊の本。
「こっちは・・・僕らの『伝説』だね」
右手にのせられた本を眺めやる。
「そして左側のが、俺らの『伝説』だ」
僕はその本を読んでみた。
本を閉じて、ルーベをにらむ。
・・・彼は僕のその反応に、珍しく笑い転げている。
「ははっ!・・・書いた奴、相当いい性格してるだろう?」
「・・・っ!だからって、こんな・・・こんな・・・」
「官能小説仕立て、か?」
意地悪く訊ねられて、赤くなっているだろう頬をそむけて。
「冗談、だ。・・・それを飛ばしても、読めただろう?」
・・・ああ、もう。
ルーベはどこまで笑えば気が済むのだろう。
それを思って、僕は溜め息をついた。
「とりあえず、相違点はそこにまとめてある」
笑い疲れたルーベが、ようやくいつものように戻った。
僕はまとめてあるメモを見る。
・血の色をした悪魔→夕焼け色の神様
・発展しないようにしたのは自然を残すため
・そもそもひとつの血脈しかないのだから生まれにくいのは当たり前
・三つ目の呪いの前にすでに人種は誕生していた
・・・女神の血に少し神の血が混ざっている人種
・神はいずれ血のバランスが崩れるだろうことを予期し
三つ目の呪い―差別が生まれないように―とかけようとした
・なお、出版年はセイ版のほうが後である
上の伝説と比較することを推奨。
分かりやすくまとまっていて、なおかつ私情がなくていい。
・・・の、だけれど。
「・・・どうして先にこれ見せてくれないのさ」
「せっかくからかえる対象がいるというのだから、な。
・・・それはともかく、俺は俺らのほうが真実味があると思うのだが」
まあ、これも美化されているだろうが、と続く。
「僕も、ヒコの方なら信じられるよ」
そう、答えた。
・・・でも、一体どうしてそれを教えてくれたのだろう。
ルーベに訊いたけれど、理由は教えてくれなかったし。
「言えるかよ、仲良くなったお礼だ、なんて。それに・・・」
あんなことを知ってしまったのだから、突き放せるはずがない。
双子だ・・・なんて。
彼の色である空を見上げながら、
僕は村へと歩いていった。
あとがき。
・・・とりあえず、ルベウスが双子のことを知る外伝を書こう。そうしよう。
でも、一体どこで俺は道を間違えてしまったのだろうか。
ルベウスが随分表情豊かだし、なんか意地悪だし。
いつの間にこの子に俺を取り付けているのだろうか。
2006/11/14 午前中。
2007/03/11