ルベウス、外出するときは気をつけなさい。
僕らはヒコ―赤いモノ―で、彼らはセイ―青いモノ―なのだから。
彼らはヒコを憎んでいる。その、違いを。
強くなりなさい。
彼らに屈することのないように・・・

―そんなこと、俺の知ったことか。

赤と青 1.0





―いいかいサフェイセス、南の森に近づいてはいけないよ。
「そばの教会には、憎いヒコが住んでいるから・・・か」
当の森に続く道を歩きながら、いつもの言葉を反芻する。

僕は大人たちを信じない。
髪と目の色が違うだけで、人が変わるなんて、そんなことはないと思う。
確かに周りにはこの空のような色を持つ人しかいないけど、
時々来る夜のような色をした旅人さんだって、いい人だもの。
・・・なんで、赤いといけないんだろう。

そう思いつつも、歩みは止めない。
周りの顔など気にせずに、僕は森へと歩いていく。



探していたそれは、教会の壁にもたれて目を閉じていた。
僕が近づくと、目を開けて立ち上がる。
「・・・俺に何か用か?」
改めて、僕は首を傾げて考える。
「ヒコが本当に悪いモノなのか、確かめに?」
へぇ、そう。
やる気のない声が背後から聞こえた。
思わず座り込む。
首筋に冷たい感触。
見上げた視線の先には、無表情の赤。
・・・その奥に、僕が逃げるのを待つ優しさを感じる。
根拠は、ないけど。

「ああ、やっぱりいい人なんだ。僕を倒す気はないんだね?」
「・・・まあ、そうだけど」どーして簡単に折れやがる。
毒気を抜かれたような顔をして、小さなヒコは返答した。
手に持っていたスプーンを放り出し・・・
・・・あの冷たいの、スプーンだったのか。

「お前、名前は?」
いきなり問いかけられた。
「え?えっと・・・サフェイセス」
「・・・名前まで青いんだな・・・」
どこか遠い目をしながら、ヒコは呟いた。
「君の名前は、何て言うの?」
「人に名前だけ聞くのも失礼だったな。俺はルベウスだ」
「君も、赤いんだね」
「・・・知ってる」
だからあんな反応をしたのか、としみじみ納得した。



青かった空が、いつの間にか夕焼け色に染まっていた。
「あ・・・僕もう帰らなきゃ。またね、ルーベ」
「・・・じゃあな、サーフィ」
僕は村へと戻る道を、走り出した。



今日あったことは、黙っておこうと思う。

・・・大人に言ったところで、理解されやしないだろうから。



「・・・セイも皆が嫌な奴じゃないんだな」
「君がそんなことを言うとは珍しい。何かあったのか、ルベウス?」
「サフェイセスとかいうのがここに来た」
「ああ、あの子か。それなら納得だ」
「・・・俺は行く。図書館の鍵借りるぞ」
「ご自由に」

不機嫌で、しかしどこか嬉しそうな表情をして、ルベウスは大広間を去っていく。

その場所には、微笑んでいるヒコの神父だけが残った。



彼の目に映った悲しげな色は、
誰にも気づかれることなく消えていった。










あとがき。
セイ、青、生。ヒコ、緋孤、非子。
・・・だからこその、カタカナですが。
珍しく家でアナログ書きしています。

さて、この紅玉と青玉の物語はどれくらい続くのでしょう。
青い薔薇の時はプロット立てたのですが、これは短編時と同じ。
・・・早い話が、ぶっつけ本番。
まあ、よろしくお付き合いくださいませ。











2006/02/25