マインドコントロール





銃声が聞こえる。
町を歩けば、赤色が見える。
たくさんの貧民と、一握りの富豪。
私は貧民として生まれて、そう育ってきて、
少し容姿がいいばかりに、売られた。
・・・覚えているべきは、その程度か。

「何も考えるな。何も覚えていなくていい」
ああ、そうなのか。
私は全てを忘れようとした。
私は全てを考えまいとした。
・・・どうせ、不可能だろうけど。



屋敷に着いたとき、その大きさと庭の壮麗さに、
・・・正直なところ、溜め息をつきたくなった。
マスターの手前、そんな愚劣なことはしないようにする。
「今日からこれがお前の家だ」
・・・とりあえず、頷いておく。

紛争なんて関係ないという、こんなところにはいたくないけど。
まあ、紛争が好きなわけでもないけれど。
・・・ただ、嫌になるくらいに、美しくて、非現実な世界を見ていたくないだけ。



幾日か経ち、私は学んだ。
ここでは私はただの玩具であり、愛玩動物である。
自由なことなど、何もない。

私は、身の程をわきまえることも学んだ。
喋ってはならない。
逆らってはならない。
出来ないこと尽くしの生活に、埋もれそうになる。
それでも、気まぐれな「規則」を守ること。
そうしていれば、何もされないのだから。



有り余った時間を使って、私はただ考えた。
これだけは、外からは分からないのだから、と。

私は考えることをやめなかった。



はじめは時間が有り余っていたのに、
いつしか、時間はどんどん短くなっていった。
いまでは「気がつけば」空いた時間に、考えるだけ。
・・・きっと、それももうすぐなくなるのだろう。

だからこそ私は書こう。
書くべきを。伝えるべきを。



この敷地には、大きく分けて二つの世界がある。
私はまだ、「向こう側」へ行く許可はされていない。
ただ、「こちら」で服従させられているだけ。
ずいぶんと長くいたから、「向こう側」に行く人もたくさん見てきた。
彼らは皆、こちらに帰ってくることはなかった。

・・・ああ、違う。
正確には「一人」、帰ってきた。
発狂してて、私には世話をすることしか出来なかった。
それはマスターの望みだったようだから。

きっと、私があまりにも長くいる、と思ったのだろう。
「向こう側」の現実を、教えてくれた。
彼から情報を仕入れなさい、沈黙がそう言っていた気がする。



そして、私は解った。
「向こう側」は、紛争の世界。
一握りの富豪が続けていたという、紛争の実態。



扉が開く音がした。
「行ってこい。『向こう側』へ」
それは、死の世界へとつながる言葉。
「返事は?」
「・・・はい、マスター」
↑ご主人様、にルビを振ることを推奨する。


そして、私は操り人形になった。

この、暗闇に覆われた世界の中で。



この兵は、この紛争は・・・この世界は、いったい何処へ?






あとがき。
気づいたときには、テーマは少年兵と紛争に。
・・・いつだ、思考がこっちに飛んだの。
明らかに「愛玩動物」云々行ってたときと趣旨違うって。
正直、テーマの割にあまり暗くもなくどろどろしてないのが心残り。
・・・もっととことんダークにしたかったです。

ああ、だからか。
だから暗いものばっかりなのか(苦笑)

2006/11/07










2007/01/28