Place of dream believer
とある小さなアパート。
清潔な部屋に、整頓されている机。
その中にあふれる生活感。
「はあ・・・暇だなあ・・・」
ソファーでくつろいでいる、長身の男性。
無意識に懐中時計の鎖を弄り回している。
「仕事来ないかなあ・・・」
表札には、『夢追い人の住処』という飾り文字。
ここは、小さな事務所だった。
事務所から、少し離れた場所にある小さな看板。
『あなたの夢のお手伝いをします――夢追い人の住処』
そして、小さな文字で続く注意事項や電話番号、住所などの情報。
その前に、少女は立っていた。
「わたしの、夢・・・?」
そう呟くと、少女はふらふらとした足取りで歩き出した。
もちろん、事務所に向かって。
からんからん。
時代錯誤なベルの音が響く。
男性は近くのスーツを羽織り、ドアを開けた。
「どうぞ」
少女は、何をしていいものか分からなかった。
ただ、体が知ってるかのように動いていく。
気づいたときには、ソファーに腰掛けていた。
「あ・・・」
「こんにちは、お嬢さん。名前を聞いてもいいかな?」
「・・・言わなくちゃ、いけないの?」
おどおどと問う少女。
「言いたくないなら構わないよ、夕日色のお嬢さん」
男性は微笑むと、少女を真っ直ぐ見つめた。
「お嬢さん、ご用件は?」
「・・・夢を、叶えるお手伝い・・・?」
少女は、看板に書いてあった言葉をそのまま呟く。
そして縋るような目付きで、男性を見つめる。
ぽん、と聞こえたのは、男性が手を打つ音。
「あ、仕事か」
・・・それ以外の何が、家に押しかけるというのか。
「で、お嬢さん。お悩みは?」
「・・・あの、私は・・・もう、哀しみたくないの」
やはりおどおどと、言葉を口に乗せる。
「そう、だね・・・」
すーっと表情が消えていく男性。
それを見て、おびえる少女。
「今の僕が、怖いかい?」
先ほどとはまた違った笑みを浮かべて尋ねる。
・・・少女は、何も言えない。
「怖いって言えるようになりな、夕日色のお嬢さん?」
少女の目を閉じさせて、また開けさせた時。
もう男性の姿はなく、少女は看板の前に立っていた。
あの時と違う所はふたつ。
少女がそのことを覚えていたこと、と・・・
少女の右手に、メモが握り締められていたこと。
そのメモにはこう書かれていた。
『あと注意はもう一つ。笑うように心がけてみなよ。 夢追い人より』
しばらくの後。
「夕日色のお嬢さんには、伝わったかなぁ?」
ソファーでぼんやりとしている男性。
「自分を出さなきゃ、駄目だってこと。
自分を持たなきゃ、駄目だってこと」
からんからん。
唐突に、ベルの音が聞こえた。
「・・・どーぞ?」
「こんにちは」
そこには、笑った少女がいた。
それを見て男性も微笑んだ。
「うん、笑ってる。・・・さて。分かったことは?」
「哀しみたくないからと、閉じこもっちゃいけないんですね。
だから私は、笑います。
どんな辛いことでも乗り越えられるように」
「正解だよ、お嬢さん」
お題はその笑顔で、と呟く男性。
・・・もうからなくても、それで構わないのだから。
「仕事おーわりっ」
そして男性は、ソファーに倒れこむ。
またベルが鳴るその日を、
ずっとずっと、待ち続けながら。
あとがき。
・・・随分とかかった。
二回目のベルまでは半年前ぐらいに書いていたのに。
ちょっと無理やり終わらせてみる。
なぜなら締め切りが明日だから(苦笑)
2006/11/30
2006/01/14