blue rose : rhapsody

狂うという表現では甘すぎる円環。
落ちていく、堕ちていく。
堕ちるものは、薔薇は、限度を知らない。


目を覚ますと、アパートの一室・・・もとい俺の家だった。
・・・脳内は矛盾な思考の狭間を忙しく回っている。
えっと・・・俺、死んだよな・・・?
テレビでは陳腐な占い番組が流れているところだ。
・・・どうやら、死んでから一ヶ月は経っているようだ。
体の機能を確かめるべく飛び跳ねても、いたって正常に動く。

机の上には手紙が二通。
とりあえず上の物から開けてみることにする。

「前略
 活動再開日より一ヶ月以内に当部隊に出頭されたし。
 草々」

・・・封筒を表に返す。
差出人は、ブルーローズ特別部隊。
ご丁寧に地図と交通費まで同封されている。
それを放り出して、下の真っ白な封筒を開く。

「慧へ 
 やっぱりこれが読めるようになったんだね。
 とりあえず、おめでとう。
 あと・・・おかえり。待ってたよ。
 翔」

部隊に行くのは後でもいいか。
そう判断して、俺は翔のところに行くことにする。



道すがら、知人に結構出会った。
声をかけた後の彼らの反応に、俺は首を傾げる。
「あれ、慧のいとこじゃん。・・・久しぶり、元気だった?」
毎回毎回そんな反応をされてみろ。
首を傾げたくもなる。
・・・俺には、いとこなんかいないのに。

翔の家に着いたが、チャイムを押すか暫し悩む。
もしも翔にもああ言われたら、という不安は拭えない。
唐突に、ドアが開いた。
「慧・・・不安に思うのは分かるけど、入りなよ」
彼の言葉に、俺だと分かってもらえていることに安堵する。

「さてと・・・久しぶり。
 君の記憶からするとそうでもないとは思うけど」
「きっと翔から言ったら一ヶ月ぶりぐらいなんだろ?」
翔はその問いに頷く。・・・じゃあ久しぶりか。

世界はやはり随分と青薔薇に侵蝕されているらしい。
廃墟と化した村も存在するのだ、と。
翔は哀しそうに話す。
・・・俺がニュースも見ないでここに来たのが分かっているようだ。

「そういえば、慧はもう部隊行ったの?」
世間話のような感じで切り出された内容に驚く。
一体、何で翔はこのことを・・・
「その顔からすると行ってないんだね?よし、行こう」
柔らかさの裏の強制力を行使できる翔にため息をつく。
・・・ああ、交通費がやけに多いと思ったら二人分でも構わないようにか。
そう思って翔を見たら、当然だという顔をしている。

「・・・質問」
電車の手すりに寄りかかったまま律儀に挙手した俺を翔は指す。
「翔って部隊員?」
「うん、そうだけど」
・・・ああ、やっぱり。
俺はまた、ため息をついた。

で、ついたけれど。
・・・話がまったく持って分からない。
呆然として立っていた俺に、翔が説明する。
「要するに、慧も部隊員になれってこと」
「へえ・・・って、え?何で?」
戸惑う俺に畳み掛けるように発せられた言葉。
「今君にも青い薔薇が見えるから」
そういえば、来る道で薔薇をちらほらと見かけた気がする。
何のことはないと思考の隅に追いやっていたけど。
「と、いうことで・・・
 正式に我がブルーローズ特別部隊隊員と認定する。
 仕事はそこにいる翔に聞け」
先ほどまで翔と話していた男が威圧を放ちながら言う。
「・・・はい・・・」

早速翔に仕事を聞いてみた。
「・・・とまあ色々あるけれど、主な仕事は暴動の抑圧と自殺支援。質問は?」
「はい。何で翔はそんなに生き生きしてるんだ・・・?」
「楽しいから?」
お願いだから疑問に疑問形で返すな。
・・・諦めとともに見上げた空は、やっぱり青かった。



日に日に仕事の量は増えるばかり。
まあ、部隊の指示で自殺させた人は帰ってくるが。
そんなもの追いつかないくらいに青い薔薇は増えていた。
俺らは会う暇もないほど忙しく働いた。

一時の休憩中、翔に偶然会った。
久しぶり、と声を掛けようとして思考がとまる。
「・・・翔、それ・・・」
彼の胸に咲き誇っている、青い蒼い、薔薇。
彼は、哀しそうに微笑んでいた。
彼にも回ってきた非情の円環は、次は何処へ。










あとがき。
書いた順序的に、もうラストが脳内に踊っています。
詳しくはencoreあとがきへ。
あと2話・・・っ。今週中に書き上げる予定です。
展開が随分と変わったのはもう夢から離れているからだと。

2006/06/07 ・・・の、encore書き上げた次の時間。










2006/09/10