ほのおの いろは なにいろ?





洞窟の奥深くに、古びた女神像があった。
この地に彼らが住まう前から、それはある。
先住民の足跡であるのだろう。
洞窟のそこまでは、燭台が据え付けられていた。
もしくは、一本道であった洞窟の分岐の目印として、作られたものだったのだろうか。
・・・ともかく、女神の像は、ここにあった。

それの両手には、炎が宿っている。
右手には、天井に届くほどに燃える、大きな炎。
左手には、柔らかい光を壁面に描く、小さな炎。
相反する永遠の炎を宿し、女神はたっていた。

旅人に道筋を与えるため。
旅人に選択を与えるため。
旅人に運命を与えるため。
炎の女神はそこにいた。



洞窟は歌っていた。
彼らが住むよりも、ずっと前の話を。
時折、彼らがそれを聞くこともある。
彼らはほかの人々にも、それを聞かせた。

そして、瞬く間に伝説は広がる。
女神の炎を授かると、幸福になれるという伝説が。



ある日、男がそこへやってきた。
持っていた松明に、女神の右手の大きな炎を移す。
すると、分岐のさらに奥の壁が、
思わず見惚れてしまうほど、神々しく輝いていた。
男は目を爛々とさせて、奥へ奥へと進んでいく。
その後、男が帰ってくることはなかった。

ある日、少年がそこへやってきた。
持っていた松明に、女神の左手の小さな炎を移す。
すると、分岐のさらに奥の方に、
少年がずっと欲しかった物があるのが見えた。
少年は満面の笑みで、奥へ奥へと進んでいく。
その後、少年が帰ってくることはなかった。



伝説を追った彼らは、一人、また一人と減っていった。
そこに最後に残った少女。
少女もまた、洞窟に向かう。

少女は女神像の前までたどり着いた。
像の両手に宿っている炎を眺めるだけで、何もしない。
「・・・そなたは我の炎を奪いに来たのだろう?
 さあ、どちらを選ぶ?
 天まで届く大きな炎と、柔らかく照らす小さな炎と」
像が喋ったことにも驚かず、少女はただ考え込む。

「・・・私は、どちらもいらない」
そう、少女は言った。

「ほう・・・何故だ?」
「私の中には、もう小さな炎が宿っているから。
 みんなと過ごした楽しかった日々がくれた炎が。
 ・・・だから、炎も幸せもいらない・・・けれど」
少女はそして、像を真っ直ぐに見つめて言う。
「みんなを、帰してよ」
「・・・そう、だな。返してやろう。
 ただ、・・・その後のことは知ったことではない」
像がにやりと笑った、気がした。

一瞬、炎が燃え上がる。
出てきたのは・・・夥しい数の、焼死体。
少女は口を開こうとして、諦める。
そして、そのモノ達を鞄につめて、無言で帰っていった。

外に出て、少女は墓を作ってそれらを埋める。
悲しみにくれた少女は見た。
綺麗な・・・綺麗過ぎる夕焼けを。





炎をもたらすものは見た

無欲な少女が そこにいた

神は思わず 首を傾げる

その存在が あまりにも奇異だと思って



たとえ 哀しみを抱えたとしても

炎は 素敵を照らし出すから と

少女は そう言うと

涙を拭って どこまでも遠くを見た










あとがき。
・・・あれ、何で人死んでるんだろう。
これの初めのイメージは、
白い服を身に纏った女の人が両手に炎を持って選択を迫る姿。
タイトルを漢字で書くと「炎の感情は何色?」になります、ここでは。










2006/07/23