とても、曖昧な・・・





ここは、無の世界。
ここには世界という概念を表す言葉さえないから、名称は僕がつけたものだ。
・・・願望として、「死後の世界」とでも言っておこうか。
今も、少しずつ体の感覚がなくなっていくのを感じる。
怖いとは、思わない。
ただ今思うことは、あの・・・怖ろしい世界から解放された、安堵くらいか。

さて、思い出したくもないことだけれど・・・
僕の思考までもがこの世界に飲み込まれる前に、
誰か聞いている人がいることを祈って、話そう。
存在は、とても曖昧なものなのだと。



記憶に留めておきたい日々があったわけでもなく、ただ惰性で生きてきた僕。
ある日、僕はこの世界から放り出された。

「おはよう」
そう声をかけると、怪訝な顔をされた。
「誰・・・?」
「・・・え、僕だよ、僕・・・」
・・・こんなやり取りで始まった、この事態。

気づいたときには僕の机はなくなり、
僕にぶつかる人が増え、
居場所はまったくなくなった。
僕は、ここにいるのに。
どこか別のところにいるわけでは、ないのに。

もしかしたら、僕はもうここにいなくて、
よくできた記憶の中を歩いているだけかもしれない。
この世界は、本当にあるのだろうか。
この人々は、本当にいるのだろうか。
僕の存在は、本当にあるのだろうか。

・・・僕にはわからない。
確認する手段なんて、何もないのだから。
本を読んでわかることではなく。
人に聞いてわかることではなく。
天を仰いでわかることではなく。
・・・三つ集まって完全なものになる、それにさえも、
すべてのものの存在を、証明できないのだから。



もう、体の感覚はすべて消えていた。
無の世界にいなくても、僕はもう、僕という存在を信じることができない。
元の世界に戻りたい、とも思わない。
たとえ戻れたとしても、僕が僕であることが証明できないなら・・・
そこに意味なんて見出せないのだから。

それ、に・・・





存在 という不確かなものに

縋って生きている僕たち



それを 取り除いてみるだけで

ほら こんなにも混乱する

見えないところから

少しずつ 崩れていくんだよ?










あとがき。
書きたいものと書けるものは違うのですね。
中央部の「世界」は現実世界で。
「三つで完全な・・・」は私なりの時間の解釈。
この物語は不完全な完全、ということで。

2006/05/16

あ、天理さんと名称が被った・・・知らない。気にしない。今更だ。










2006/07/09