あまりに其処が高すぎて





かみさまは おさなごを もとめました。
「これからは 幼き子を差し出せ」
かみさまは そう おっしゃいました。
「三つになる子がおるだろう。今年はその子だ」
むらの おとなたちは それは それは なげき かなしみました。
でも かみさまは わたしたちに すくいのてを さしのべてくださったのです。
それすらも わからないなんて。

おとなって わからずやなのね。
ずっとまえから しっていたことだけど。



人間たちの、嘆き哀しむ声が聞こえる。
神、と呼ばれ畏敬される我に、子を与えなければならないから。
当の本人を見てみるといい。
泣き叫ぶこともせず、むしろ笑っているではないか。
我々にとっても、御前達にとっても、いいことだと分からないのだな。

やはり、人間は愚かだ。
そういう所も、嫌いではないがな。



わたしは やまのうえまで つれてこられました。
しばらくあるくと ちいさな ほこらに つきました。
おとなたちは ないて わたしに わかれをつげました。
そして このばしょには だれも いなくなりました。
わたしと かみさまを のぞいて。



「はじめまして かみさま」
少女はそう言った。
顔には満面の笑みを浮かべている。
「こんにちは、幼き子よ。名は、何と言う?」
「おとなから もらったなまえは きらい」
少女は考えるように続けた。
「だから かみさまが わたしのなまえを きめてよ」
「構わない。・・・幼き子よ、我にも名をつけてくれぬか?」
「いいよ かみさま」

そして数分が過ぎた。
祠の前で互いの名を考える二人。
端から見ると、それはとても不思議な光景だった。
「きめたよ かみさまのなまえは たいき」
そう言って少女は地面に『大輝』と書いた。
「なるほど。・・・そうだな・・・では、初音」
「よろしくおねがいします たいき」
「こちらこそよろしく、初音」
そして、二人の共同生活が始まった。



「たいき わたしは なにをすればいいの」
「初音はただ、仲間を探せばいい」
そういう大輝に、初音は首を傾げる。
「わたしみたいなひとを さがすの」
「ここに生まれるには知能が高すぎる者たちだ」
「うん わかった」
そして初音は、にこりと笑った。
つられて大輝も嬉しそうに笑った。

わずかな間に築き上げられた、二人の世界。
とても、穏やかな空気が漂うところ。
寝て、起きて、仕事をして。
何をしているときも、二人は幸せそうだった。

お互いの名をよく呼び合う二人。
それは、絆の証。
まだとても小さな世界の中での、確固たる絆。
絆が消えることがないという確認。
呼ぶことで、安心できる。
呼ばれることで、安心できる。
いまは、それだけで十分だった。

いつまでも同じではないと、二人とも分かっていたから。





たとえるならば 季節外れに咲く花

花は 現世に埋もれ 消えるのがさだめ

しかし 拾われた花は・・・



傾いた天秤は 何処まで今に耐えるのか

それでも 動き出したものは

もう 止まらない










あとがき。
・・・早く生まれすぎたとして、どうして三歳児が漢字を書く。
自分で突っ込むのもどうかとは思います、が。
それと、「初音」は「はつね」と、「現世」は「うつしよ」で。
これを書いている現段階でも、未だにタイトルが決まっていません。
さて、どうしよう・・・

2006/03/22










2006/06/04