Desert rose
僕はふらふらと彷徨っていた。
視界に入るのは、果てしなく続く砂の海。
水や食糧を確認しても、残り少ないことが分かる。
・・・いつから、歩いているのだろう?
・・・いつまで、歩いていくのだろう?
何も、分からなかった。
僕に出来ることは、ただひたすら歩くことだけ。
何度目かの夕日が暮れ、夜が訪れた。
気温が下がっていくのを肌で感じつつ、僕は歩き続けていく。
・・・遙か彼方に、砂ではないものがかすかに見えた気がした。
僕は、逸る気持ちを抑えつつ、それに向かって歩いていった。
それが、蜃気楼でないことを祈りながら。
そこには、一輪の可憐な花が咲いていた。
砂漠という環境の中で、気丈にも咲いている花。
僕がそれに惹かれてそっと手折っても、まだ、花は存在している。
・・・幻では、ない。
僕の手の中で、それは輝いているように見えた。
そして、また歩き出そうと視線を上げたその時・・・
目の前に広がっている、鬱蒼と茂った森。
僕は自分の目が信じられなかった。
こんな出来事が起こったのだから、当たり前だろう。
しばらく呆然としていたが、遠くに聞こえた音にはっとする。
・・・水が、流れる音。
僕は音を頼りに、薄暗い森の中を進んでいった。
「あ・・・!」
思わず声に出すほど、僕は動揺していた。
視界の隅に入った川に、目を留めぬほど。
その川の、少し手前にある木。
そこに佇む彼女は、遥か前にはぐれたはずの・・・僕の仲間。
何故、彼女がここに・・・?
そんな思考を抱えながら、僕は彼女の所へ急いだ。
ところが、彼女は僕を見ると、ふわりと微笑んで走り去っていく。
僕は彼女を追いかけて走り出した。
見失わないように、出来る限り速く。
今考えると、疲れ切った僕の出せる速度は限られていたのだから、
きっと、彼女は僕に合わせて走ってくれたのだろう。
やがて、見晴らしのよい場所に出た。
茂っていた木がまばらになり、すぐそこには崖がある。
下のほうに、川が激しく流れている音が聞こえた。
彼女はそこで、僕のほうを見て立っている。
「ここが、私の死んだ場所」
僕が疑問を口に出す前に、彼女は次々と語っていく。
「何も遺せなかったから、心残りでね。
だから、迷っている人を・・・いえ、あなたを呼んだの。
道が分からなくなっているだけじゃないでしょう?
自分が生きていていいのか、不安になっているよね」
哀しそうに俯く彼女に、僕は・・・正直、驚いていた。
ここまで言い当てられるなんて、と。
「頼みたいことがあるの。
私を知っている人に、私が死んだことを伝えて」
彼女はそう言った。
これが、彼女の言う心残りなのだろうか、と僕は考えた・・・が。
「先に謝っておくね。・・・これから言うこと、忘れてもいいよ。
私はあなたのこと、好きだったよ?だから、生きて?」
・・・少しためらったあとに続いた言葉が、そうなのだろうと分かる。
そして、彼女は僕の持つ花を取り、下に流れる川へと堕ちていった。
僕の返事も聞かないで堕ちていく・・・なんて、ひどい人だろう。
僕だって・・・今更、言えることじゃないけどさ。
だけど、絶対に忘れてなんかやらないから。
また、あたりの風景が変わった。
・・・いや、戻ったというほうが正確か。
前方に砂嵐が吹き荒れているのが見える。
先ほどと違うのは、もう花は消えてしまったということ。
砂漠の花は、彼女がもたらしたものだったから。
・・・僕は彼女に会って、更に分からなくなった気がした。
一体、何がどうなっているのだろうか、と。
風が強くなってきた。
前を見ると、すぐそこまで砂嵐が迫っている。
・・・ああ、ここが僕の死ぬ場所なんだな。
その思考は、自然と僕を支配した。
僕は砂嵐に向かって、歩き出していた。
・・・僕は、色々なことを思った。
もう冒険なんか出来ないんだな、とか。
ちゃんと仲間は生きているかな、とか。
そんな中でも・・・特に強く浮かんだ思考は、
僕も彼女のように留まらなくてはいけない、ということと、
彼女に謝らなくてはいけない、ということだった。
・・・ちゃんと、死んだということは伝えてくるよ。
その後、あなたの所に行くから。
砂嵐の中、僕はそう思いつつ目を閉じた。
花が見せてくれた 幻想
今はもう 何もない
あの楽園は 消えていった
砂漠の花に 導かれるままに・・・
旅人を惑わせる 砂漠の花
それは あなたの心の中にも 咲いている
あとがき。
方向性がずいぶんそれた気がします。
何より、詩と小説がかみ合ってない・・・
最初に浮かんだのが詩だからでしょうが・・・
難しいですね、小説って。
2006/02/17
2006/05/07