雨で揺らいだ境界線
雨は嫌い。
・・・いや、それは違うな。
雨の中楽しそうにしている子供を見るのは好きだね。
ただ雨を眺めているっていうのもいい。
だけど、僕が雨の中歩かなくてはいけない時。
僕が雨なんかに屈しているような気がするから嫌いなんだ。
用事もないのに歩くなんてことだけはしたくないね。
・・・そんな理由だけなのかって?
もちろん違うよ。そんなことはない。
寒いし、濡れるし、傘忘れるし・・・
まあまあ、そんな呆れた目で見ないでくれ。
一応、もう少しだけまともな理由も、あるにはあるんだから。
聞いてくれるかな?
雨の日に外に出てはいけない。
これは、僕のジンクス。
なぜなら、外に出れば嫌なことが待っているから。
それでも用事があるときは、仕方なく出るんだけどね。
今までも、雨だというのに火事が起きたり、交通事故現場に遭遇したり。
理由もなく喧嘩になりかけたこともあったな。
一番大きかったのは、あの時。
やはりその日も雨の日だったね。
僕は、封筒を届けに外へ出た。
行きには珍しく何もなくて、変だなと思ったんだよ。
この先、もっと酷いことが起こるんじゃないかと。
事実、行きに何もなくて帰りに車に撥ねられたことがあったからね。
色々と考えながら、僕は帰り道を辿っていった。
足元のおぼつかない酔っ払いに遭遇してね。
どん、とぶつかられたわけ。
何が悪かったって、その場所。
駅のホームの端だったんだよ。
しかも、ちょうど電車が通過していく所だった。
僕はホームから落ちかけたところを、電車に撥ねられて。
そしてそのまま勢いで高架下へと落ちていった。
で、車に撥ねられてここに来たってわけ。
不運どころじゃないって顔してるね。
たった一つだけいいことがあったから、それでいいんだよ。
・・・何かって?
そんなの、先に逝ってしまった君にまた会えたからに、決まっているじゃないか。
・・・僕の体、消えかけてるね。
まだ僕は生きなきゃいけないのかな。
じゃ、またしばらくお別れだね。
最後に、君を縛ってあげる。
・・・僕を、待ってて?
そんな哀しそうな顔しないで、笑顔で待っててよ。
僕はまた来るからさ。
そして、僕は病院のベッドの上で目が覚めるのを感じた。
体を見下ろして、僕は何度目か分からない溜め息をつく。
・・・何で、無傷なのさ。
・・・何で、向こうにいけないのさ。
雨は嫌い
あの人に会えるけど
また 引き離されてしまうから
だから 雨なんて嫌いだ
もう 別れの味なんて知りたくないよ
あとがき
これ書いてるのは面白かった。
三月並といいつつも冷たい雨が降った日のこと。
それが、いつのまにか方向性を変えてここに至る。
・・・いつものことですが。
2006/02/05