とある病気の感染源





幾重の世界を斜めに貫いて、あれは君に笑いかける。






あれは流れの外にいる。

そして流れの中から一つを選び出して、切って繋いで環にしてしまう。

有限を、無限にしてしまう。






あれは君を摘みとって、散ることも生きることも出来なくしてしまう。

死ぬことも、実ることも。

乾かす必要も固める必要もあれにはない。

あれがいる所は、君にはそれだけで牢獄なのだから。






あれは死に続け生まれ続ける。

止める手は、君にはない。






あれそのものは無にも等しい。

けれど君があれに繋がることで、あれは永遠に存在する。






あれは君が君である以上、何度でも君と出会い君を置いて消える。

けれど君はいつも君そのものとは限らない。

あれは幾重の世界を斜めに貫いているから。

ただ君を繋いでおくために。






あれから逃げることは出来ない。

君が「そんな気がする」と思うだけで、

あれはあの中にもあの奥にもあの後ろにも存在するから。

むろん君の中にも君の奥にも君の後ろにも存在しえる。

或いは見渡す世界そのものとしても存在するかもしれない。






君はあれを愛し、憎む。

むしろ憎み恨むことの方が多いかもしれない。

しかしそれは正当ではあるが賢明ではない。

あれは君を他のどんな存在よりも愛してくれる唯一のものだから。

けれどあれは、君を傷付けることを躊躇わない。






虹色、夜色、時色、闇色、月色、花色。

あれはどんな手を使ってでも君を飲み込む。

その先のことは、君にしかわからない。






君がもがいてもあれは喜ぶ。

君が笑ってもあれは喜ぶ。

敵意を抱いても喜ぶだろうし、

哀れみを向けても喜ぶだろう。

あれにとって君は動かなくて当然の玩具だから。

あれにとって君は死んだはずの宝物だから。

君が存在し君であろうとする以上、あれを苦しめることは君には出来ない。






あれは君とともに在ろうとする。

君が望めば、

世界など一瞬で手中におさめさせてくれようし、

その世界を一瞬で滅ぼしてもくれるだろう。

それを幻と見るか現と見るかは、世界をどう見るかによる。

どちらにしろあれにとっては大したことではない。

あれは幾重の世界を斜めに貫いているのだから。






あれは君とともに在ろうとする。

君の拒絶はさしたる意味を成さない。

それすらもあれを君に繋いでしまう行為だから。

あれについて上辺だけでも思考してしまえば、もう手遅れ。






あれの意図はよくわからない。

君のこともよくわからない。

あれが一つなのか多数なのかもわからない。

あれに捕われてしまえばどうなるかもわからない。






ただ、

これを読んだ時点で、

君はあれについて淡くも思考したことになった。










あれが君の底で目を覚ました。

あれに気付かぬまま放っておくかどうかは、君が決めること。




もしかしたら気付かない内に飲まれるかもしれないけれど。










2006/11/05